気が利くさりげなさ
2017.03.14
よく神社やお寺に行くと、いきなり出てくるベンチ。
見た感じとっても普通の。
何気なーく座る。
おや、おやおや。
なんだこの感覚。
お尻がしっぽり。
なんだか納まりがいい。
なるほどね。座り心地がとんでもなくいいのはこれが原因か。
寸法にして30mm真ん中の板が薄い。
間隔と高さをメモりました。(職業病)
合わせて、材の間隔もさることながら
角がテーパーに取られているので、太もも裏や坐骨
あたりのさわりが優しい。
お尻が包みこまれる感じになる。
今まで多分結構な数のベンチに座って来たはずです。
手の込んだものだと
座面全体が真ん中に勾配がついているものなど、
よく家具屋で見かけます。これもいい座り心地です。
がしかし、この寺のベンチはなにが秀でてるかというと
座りやすさで同じ効果があるのに、
ただ真ん中の材厚を薄くしただけ。
何度も削ったり調整したり手間がかかっていない。
ということはお金がかかっていないということ。
手間がかかってというならよくあるのだけれど、お金をあまり
かけない設計にすごく意味を感じました。
ご飯を食べに行って、なにげなくお通しで出てきた菜の花の
お浸しを食べたら、奥の奥にほのか~にワサビの風味がしてくる
ようなさりげなく、気が利いてる感がとてもよかった。
縁側をつくるときにはぜひ一度これをオマージュしてみようと。
こういう「気が利くさりげなさ」なもの、ことは
人が使う、人が思うことをしっかりと想像し、普段から
手を動かし、材料を手配し、作る工程までイメージをして
色々と思いめぐらせた体験からしか生まれない気がします。
良い体験でした。
手前味噌ですが、私たち古今の特徴は
経験に裏打ちされた設計力と施工技術力の
両方を持っていること。
設計しながら使いやすさはもちろんのこと
デザインと同時に施工精度の検討や職人さんにかける
手間のこと、
流通規格品の木材寸法を考慮し材料の無駄を
なくし予算を抑えた設計など
常にいつも設計と施工を行き来しながらバランスを
意識して住まいを創っています。
設計デザインと施工、予算のバランスを保ったまま仕上げていく事。
設計事務所さんや町のリフォーム屋さんには無い持ち味だと
思っています。
それぞれの住まい方・暮らし方に基づいて
気づきや思慮を、形にして
住んでもらって、使ってもらって初めて
じんわ~り味わってもらえるような
しかも、あまりお金をかけないような滋味深い仕掛けを
作っていけるよう精進していきます。
ちなみにあのベンチは、猫好きが集まるお寺、
豪徳寺にあります。
彦根城のゆるきゃら、ヒコニャンは豪徳寺の招き猫が
モデルらしいです。
motoi