手で造る

2023.10.29

 

先日、用事も兼ねて京都へ。

 

実は少しだけ京都に住んでいた事もあり、

毎年一回は遊びに帰っています。

 

そんな機会も重なり、せっかく京都に行くならと

以前から行ってみたかった建築家 堀部安嗣氏が設計を手がけた

私設図書館と喫茶が併設された「鈍考/喫茶  芳」を

もう一つの目的地に。

 

コンセプトは

時間の流れが遅い場所を作りたい。

人を取り巻く日々の流れが加速する中、

社会のシステムやテクノロジーが求める速度から、

あえて鈍くあること。

現在の技術や社会構造が人間に求める即時制や

日々の高速回転とは距離を置いた「鈍さ」。

それをほんのひと時でも体感し、

1冊1冊の本(先人の智慧)に深く潜る為に作った、

未来に向けた本と時間の実験室が「鈍考」です。

(HPから引用)https://donkou.jp/

 

京都駅から電車を乗り継いで約50分。

推奨の行き方である叡山電車に乗り最寄は三宅八幡駅。

 

1両編成の電車初めて乗りました。

地元伊豆でも3両編成なので、、笑

京都の人からしてもニッチな場所にあるらしく、

観光客はほぼいません。

 

 

途中、駅改装中の一枚。

こう言うところがいちいち良いなあと。

 

 

到着、改札もない駅員もいない。

 

 

石積み。色んな所に手仕事が垣間見えます。

 

 

こんな感じの道なき道みたいな道?を進み、

道中の家々も古く静穏な空気感の中、

通り過ぎてしまいそうになるくらい

馴染んでいたこの日の目的の場所。

 

 

もうずっとそこにあったかと思うほどに違和感がなく。

 

 

 

入り口の扉を開けてすぐの景色。

圧倒的な緑に視線が吸い込まれました。

 

 

縁側の軒は低くおそらく軒先で2mほど。

開放感のあるはずの屋外空間がグッと低く設定された軒で

開放感がじわーっと広がっていく感覚。気持ちが良い落ち着き。

 

 

 

小上がり畳から縁側。

 

 

 

取り合い部分。寸分の狂いもないとはまさにこのことです。。

ちなみに手刻み。(大工さんが手で材料を刻み組み上げていく工法、究極の手作りです。)

 

 

 

本棚に設けられた手すり。

一番に使う人のことを考えていることがわかります。

 

随所に考えや手仕事の熱が感じられ、

コンセプト度外視で、本片手にキョロキョロ、、。

限られた空間に大人6人で90分間の限られた時間。

素材使いや天井の高低で見えない空間の仕切りに、

他の何かが気にならないほど自分の居場所を見つけることができました。

 

 

 

長くなってしまいましたが現場のことも。

古今史上最大規模のリノベ進行中。

 

増築も絡むリノベに解体した様を見て少し足がすくみました。

ほぼスケルトン状態。

こちらの増築も、手刻みで軸組みを組んでいきます。

 

 

墨付けと言われる作業中。

柱や梁を組むための穴あけだったりの位置を

材料に書いていきます。

 

 

こちらは専用の墨差しと呼ばれる道具。

 

当たり前に工場で製材して組んでいくプレカットしか知らないので、もう物珍しい光景に興奮しっぱなし。

 

 

 

こんな感じで刻み、組んでいきます。

 

 

 

 

昔は当たり前に手刻みを経験してきたベテラン大工さんでさえ、

手で刻むのは10年ぶりくらいじゃないかと。

プレカットにすれば楽なのに〜と言いながらも

すごく生き生きと楽しそうに仕事しているように見えてますよ!笑

 

そんな姿を見れて嬉しかった反面、

この技術が失われていくことへの危機感を改めて感じました。

こうやって一般的な住宅を叩く大工さんに

その技術がなくなっていくことに、寂しさを感じます。

そのくらい時代と技術を受け継ぐ職人さんが足りない現実。

 

 

本物の技術を伝統を受け継ぐ意味でも、

今回のリノベは心に記憶に体に

しっかりと焼き付けたいと思っています。

 

 

古今 増島

思いを思う

2023.10.14

祝 上棟

 

 

古今ロゴ入り桧の柱が並びます。

館町の家では上棟を迎えました。

 

 

みんなが忙しくバタバタしてる中、

自分が施工を担当すると

こうはいかないのだけれど、

今物件は、鈴木が施工を一緒にやって

くれるので、純粋な設計者として

一人ヘルメットかぶりながら、現場を

各所確認する作業をしていく。

 

ふらふらしてんじゃねーよっていう

施工側の目線がたまに痛い。

 

役割です!

 

上の写真は、

竹林を望むための木製窓の画角位置。

 

当初はコーナーサッシも考慮に

いれていろんな検討をしたけど

準防火の中の樹脂サッシ、木製サッシの

サイズの限界を思慮しつつ、もちろん

お金も考えながら、優劣をつけて

考えすぎて1周廻ったりしながら

住まい手とがっちり

決めていったことを思い出します。

 

まあ想定通りかな。

 

 

 

 

この二枚は、アプリを用いて

掃き出しの木製サッシから享受

できそうな冬の直射を想定する。

(敷地をチョイスする段階でもこの

アプリは利用価値高めです!)

 

 

冬至の太陽の軌跡を確認。

(黄色が春秋で水色が冬の太陽の軌跡)

 

 

午前10時から午後14時までは

しっかり日射が入りそう。

(夏は庇で日射をカット!)

 

 

この家はリビングに天窓をつけて

夏場にスクリーンで遮りながら

冬場の日射を思慮。

 

 

隣家の想定で(隣家も去年新築)

冬の朝型の日射を入れられないかも

と思っていたので、想定通りに近い。

 

 

冬の家の暖かさは直射日光をどれだけ

取り入れられるかで勝負は決まります。

 

 

その日射で温まる空気を保温するのが

断熱性能。

 

 

勘違いしやすいですが、

断熱が良い家は暖かいは勘違いです。

 

 

あくまでも

直射日光なのか、エアコンやストーブなのか、

何が熱源かにもよるのですが、その熱源で

暖めた空気を保温して熱を逃げにくくする

のが断熱。

 

 

このときにできるだけ設備に頼らず、

自然のストーブである陽光を活用するのが

パッシブの家づくりの考え方。

 

 

でも一歩間違えると、夏場の日射も

しっかり入ってきたり、庇だと

斜めから差しこむ陽光に対応できなかったり。

 

 

なかなか完璧はないですが、

それを何とかコントロールしようという

意思と検証と

それを思慮する時間の消費への覚悟、

そして実行が大事だと思ってます。

 

 

上棟の時間は、ちょっと手が空くと、

窓の位置、高さ、見え方、隣地の窓など

想定はしていたけど、実際は

どうなのか。

 

 

建物のシルエットはどうなのか、

屋根のデザインはどうなのか、

様々なことが、二次元から

一気に三次元の実物大に

なるため、まあ思慮が止まらない。

 

 

上棟の時間は

過去の自分の時間と向き合い、

答え合わせをする時間でもあるんです。

 

 

 

 

 

それぞれがそれぞれの

置かれている立場で奮闘する中、

住まい手からの差し入れ。

 

最高っす。Sさん一家のみんな。

 

ボーイ&ガールズからご意見、

応援も。(おじさんら頑張るわ)

 

人の温度感のあるものは心に染みます。

 

建売とオーダーメイドの一番の違いは

これかもしれないですね。

 

山田大工筆頭に全職人、古今全員で

やり切ってまいります。

 

 

 

 

某所:M邸

いつかのブログネタにと

思って、撮っておいた

上棟の時の写真。

 

真夏の祭典でした

 

前日まで雨が降り、

娘ちゃんが作ってくれた

テルテル坊主。

 

この日は効果てきめんだったよ。

 

あの時はありがとうね。

 

 

 

 

この家は外部の塗り壁の仕上げの段階

 

 

 

 

この色の、土色の表情が色味が好き。

 

乾燥するともう少し明るくなるけど

日陰ではこの色がメインに馴染みます。

 

 

さて、この家は11月中旬の

木工事完了に向けて、あと一か月。

 

ここから、造作祭りが開催されます。

 

担当大工の遠藤大工は、変態気質の

優秀大工なので、造作祭りを前に

笑ってくれているのが救いですが、

当の設計・施工の本人は材料段取りする中で

少し引いてます。。。

 

やってみないとわからない部分もあって

考えながら動くことをしながら、

一歩一歩進めていきます。

 

人の期待や

思いに思うこの頃。

 

重圧と共に幸せを感じます。

 

と同時にぼくらの建築力を

無償で上手く利用してやろうと

いう魂胆がにじみでてくる方々にも

遭遇します。

 

貴重な時間をそんな方々に

掛けてられない。

 

アウトプットのみの

苦しい日々で、

時間があっという間に

過ぎていく中、この仕事への

矜持と役割は全うできるよう

対人の整理をしながら

心と体をどう保つか。

 

40代になっても解決できない

僕の課題です。

 

 

古今 元井

 

 

 

 

 

 

 

G2レベルを一つの指標に

2023.10.08

横浜市は省エネ性能向上を目指し

「よこはま健康・省エネ住宅技術者登録制度」

というものを始めました。

 

 

断熱性能最高レベル(等級6,7)が

当たり前となるような社会目指し、

住まい手が健康・省エネ住宅の設計・施工者を

選択しやすい環境を整えることを目的として

一定の知識や技術を習得した事業者の

登録・公表する制度です。

 

 

脱炭素社会に向けて家庭からのCO2排出量を抑える事と、

多くの時間を過ごす「住まい」の目に見えない部分の

性能を高め健康で快適な生活を送れるように

することを求めます。

古今でも早速、登録し講習を受けました。

 

 

古今では等級6(G2レベル)以上を目指しており、

直近の新築物件の断熱性能値をまとめてみました。

(等級6(G2レベル)とは、

冬期の室内体感温度が

13度を下回らないくらいの性能値

UA値(外皮平均熱流率):0.46w/㎡k)

 

A邸:0.45w/㎡k
開口部:アルミ樹脂複合サッシ・一部木製サッシ
屋根断熱:高性能グラスウール22K 厚300㎜
壁断熱:高性能グラスウール24K 厚105㎜
基礎断熱:押出法ポリスチレンフォーム 厚50㎜

 

B邸:0.44w/㎡k
開口部:樹脂サッシ、メイン開口部:木製サッシ
屋根断熱:高性能グラスウール20k 厚310㎜
壁断熱:高性能グラスウール20k 厚105㎜
基礎断熱:押出法ポリスチレンフォーム 厚50㎜

 

C邸:0.43w/㎡k
開口部:樹脂サッシ、メイン開口部:木製サッシ
屋根断熱:高性能グラスウール20k 厚310㎜
壁断熱:高性能グラスウール24K 厚105㎜
基礎断熱:押出法ポリスチレンフォーム 厚50㎜

 

D邸:0.39w/㎡k
開口部:樹脂サッシ、メイン開口部:木製サッシ
屋根断熱:高性能グラスウール22k 厚300㎜
壁断熱:高性能グラスウール20k 厚310㎜
床断熱:高性能グラスウール32k 厚121㎜+高性能グラスウール32k 厚60㎜

 

使用する断熱材の違いは多少ありますが、

横浜市が目指す等級6(G2レベル)はクリアできています。

国が2025年に義務化する断熱性能基準値は0.87w/㎡k(等級4)なので随分と差があると言えます。

 

 

さて、D邸は古今で今まででやってきた中で

最高値が出ています。

 

いくつかの要因があるのですが、

まず、開口部の数がいつもの設計より少ない事。

居室以外では窓は設けず、または最小限にしており、

一番大きく影響のある開口部を抑えている事。

 

それと、建物全体を低く抑え、

天井高も通常より低めにしていることで、

壁面積を小さくしている事。

 

そして、床断熱を2重にしている事。

床断熱は基礎断熱と変わらない数値はでるのですが、

体感として基礎断熱と比べると劣る部分があるので、

2重にすることで体感温度を向上させようとしています。

 

ただこの数値はお金を掛ければ

出てしまう数値。温かい、寒いを

指標する数値ではあるけど

要は、建物のシルエットや

内部の窓のデザイン、インテリア

目に見えない居心地、

背に腹は代えられないお金の

整合性を同時に出せて

始めて意味のある数値になる。

 

この数字に惑わされないで。

 

A邸は先週のブログでお知らせしました鈴木氏ご実家で

来月オープンハウスを開催します。

詳細決まりましたらお知らせします。

体感しにお越しください。

 

代田