気勢を意識する
2020.02.01
いやはや暖冬。
ほんとに今年の冬は暖かい。
さすがにタイツは履いてますが、
靴下二枚は履いてない。
現場にいてもそこそこ耐えられてしまう。
こんな冬は、統計を見ても大雪があるあるらしく、
私個人の感覚でも、こういう冬に限って大雪が
って言ってた気がしています。
南岸低気圧、お気をつけなさって。
すみれが丘の家
木工事着工して早くも二か月。
着々と進んでいます。
テラスの鉄骨もスマートに納まりそう。
落下防止の観点
手摺としての強度
フラットバーと丸棒の接点のデザイン
壁との取り合い、接合の仕方など
結構悩みました~。
でも悩んでよかった。
こんな図面で鉄骨屋さんとやり取りしながら
最終決定から製作。
住まい手にも、変にカッコつけて無くて
良いですねって言ってくれた。
そう。
そこなんです。。。
屋根の裏は杉の赤身板貼りに
腐朽菌を発生させない自然塗料塗仕上げ。
この緑がかったグレーから、くすんだ茶色に変色していきます。
新品なのに、何年もたったような
経年美化した色味に仕上がり、
基本はメンテナンスフリーなので、
最近の古今の物件で、木板仕上げがある場合、
重宝する組み合わせになっています。
外壁は、そとん壁の掻き落とし仕上げ。
左官屋さんとあーだこーだ言いながら
各所の防水納まりも決めていきます。
こんな雰囲気の外観を見て、
珍しく冷えた寒い朝に、声をかけて下さった
品の良いマダムがいらっしゃいました。
時々、この現場の前の道が散歩コースになるようで
品のよいマダムは開口一番、
「良いキセイを感じるお家ね」
と仰いました。
キセイ?
確かにキセイって聞こえた。
キセイってなんですか?って聞く前に
あの木は何の木?
壁は何になるの?
もしかしてああのまま?
って言う具合に矢継ぎ早に質問され、
大事なキセイが何なのかわからず話が進み、
「完成したらぜひ御見せになって頂戴。
私、お家を見るのが好きなのよ」
って。
キセイで頭がいっぱいで話がテキトーに
なってしまってマダムには
申し訳なかったのですが。
キセイを調べると
気勢
と書くことがわかった。
さらに調べると、造園用語として使うと
形あるものにはすべてに存在し、
物から発せられる見えない力
のことを言うらしい。
少し前に有名な造園家の方の本に
良い庭を設計するには、そこに存在する建築物や
在来の樹の向きから発せられる
その力を感じ取る感性が必要だと書いてあった。
興味ある方はぜひググってみて下さい。
おもしろいです。
まさに気勢を意識して
感じ取るという事だろう。
僕らの職業でも同じで、
新築であれば土地、
リノベであれば建物、
それが持つポテンシャルや空気感、
雰囲気という類のその場所に宿る
「気勢」を感じ取って初めて
その場所に相応しい
心にストンと落ちるものが作れる気がしています。
確かに気勢という言葉は知らなかったが
アンテナが敏感な人にしか感じ得ないもの
ってあるし、その道で精進してきた人にしか
わからない勘所みたいなものってあると思う。
マダムがすみれが丘の家に気勢を感じて下さった
のだとしたら、そのあたりが上手く汲み取れた
建築ができているのかもしれない。
いい言葉を教えて下さって有難う。
まるで自分が作った造語のように使おう。
気勢を意識しあって、人とその感覚を共有できたときには
何かその人に特別な繋がりを感じたりもします。
住まいの住まい手と作り手。
そんな関係で作れた家はきっと幸せです。
元井
OPEN HOUSE