家の中のB面
2020.09.04
7月に一つもなかった台風。
やはり力を溜めて来たか。
甚大な被害が出ないように願う。
和泉の家
お引渡し目前。
小窓と格子の控え目で「素」の外観。
カメラマン入れて、撮影をしていく。
家にとって、猫もそうだけど
植栽とダイニングテーブルと椅子がそこに入ると
一気に血の通った景色になる。
不思議だ。
こんな時期なので、大々的なOPENHOUSEは控えたが、
住まい手にも快く協力してくださったおかげで
弊社にお声がけしてくださっている方々に
見ていただき、すこぶる反応が良かった。
純粋に嬉しかった。
少しコンパクトで小さいお家だけど、
目が行き届き、人と寄り添うように暮らせる。
そんな家は、コストを抑えられ、背負うものも
身の丈に合うものになる。
合わせて、この家を作っているときに
感じたこと。
家にはレコードでいうB面が必要だということ。
日常の楽しいとき、うまくいってるとき
調子がいいときは、人ってもしかすると
静かに機能を発揮し、最適で最短の導線と
性能を発揮する家がそこにあればいいの
かもしれない。
極端にいえば、
雨風がしのげ、寝れれば良い?
のかもしれない。
これがA面。
でも、人間生きてると不測の自体に遭遇する。
そんな時に発動するB面。
言い換えれば、人を包み込み、人の
内側に入り込むような側面。
人に傷つくとき、裏切られたとき、
報われないとき、人に会いたくないとき。
上手くいかないとき。
現在進行中のコロナも。
心が傾いたり、不感症になっているとき
首を横に向けると窓越しに見える緑、
窓から吹き込む一陣の風、
窓から仕込む光、
優しい空気感が、
どれほど救いになるか。
受け入れてもらえる場所があること、
自分の「好き」が正直に表れている居場所
が人生をどれだけ豊かに、支えになるか。
今回は、このB面の建築力を再認識した。
人に対しても良く言うけど
ダメな時、難しい状況の時に
その人の本性、人間性がでると
いうけど、家も同じだ。
このB面の建築力を知っている設計士は
いつもPLANにこれをひっそりと潜ませようと
模索しているし、これと戦っている。
住まい手の好みや周辺環境、使う素材など
多くのものにB面は左右するので、すごく
整理整頓、取捨選択が難しい。
何度も何度も線を引き直し、
時間をかける。
施主の要望に純粋に従えば、
PLANなんて最短でできる
けど、何よりこれに悩むと、
エンドレスで悩む。
むしろこのB面がない家であれば
私たちの役割はそこにはないと言いたい。
もう一つの顔がある家は、人の手で練る。
古今が目指す家。
暮らしにも、人の人生にも、優しい家が
今の世の中、多分今後の世の中にも相応しい。
元井