人の手がつくる
2018.07.14
天気がおかしい。
異常気象が~という話があがりますが、ここまで来ると
もうこれはアクシデント的な異常ではないです。
世の中もそうですが、普通っていうものや一般的な定義がいま、
大きく舵を切っていて、その変化を受け入れられるか
まだそれを信じるか、その判断によって命すら
守れないフェーズにきてる感があります。
僕らの生業でも天候と大きな関わりがあり
温度や湿度、季節感すら定義に当てはまらない事が
多くなっています。
(今日も現場居るだけで汗だくでした)
地震についても今まで日本の建築基準法は
震度6でも倒壊しないレベルで設定されていましたが
先の熊本地震では余震本震立て続けに2回もの震度7
が起こるという想定外な地震が起きました。
じつは、建築業界では、余震本震で同レベルの地震が
来たとき、現状の耐震性能で。。。という懸念は
ありましたが、まさかそれが本当に起こるという。
もうまさかではないです。
特に私たちが得意とする柱や土台などの構造をのこして
新築同等の温熱環境、耐震性能など
改装するような大型のリノベーション案件は
ひとつの定義などがなく、その家の構造や木の状態
従前の方のお手入れの仕方など、様々な要素によってそこに
存在しています。
同じ築年数でも、新築当初の家を建てた会社や大工さんの
意識によって、周辺環境や上記の要素でまったく
といっていいほど一つの定義が通用しない
かなりの難易度の応用問題がそこにあります。
自ずと状況に応じてどれだけ臨機応変に
対応がとれるのか、同じお金をかけても手掛ける方の
意識によって費用対効果が雲泥の差が出るのが事実です。
ただ断熱を厚くすれば、耐震金物を付けておけば
というひとつの概念ではまともな家が作れないという
現状がそこにあります。
先日、以前の所属会社時代から意識している
自立循環型住宅の講習会へ行ってきました。
いくつか新たな発見や今の目の前の仕事に置き換えて
思うコトが多々あった意識の上がる時間でした。
自立循環型住宅とは要は暖房や冷房設備に頼る前に
周辺環境を読み取り、自然風や自然光をどう上手に生かして
設計していくかという科学的に実証されている手法を用いて
その家に落とし込んでいくいくという考え方。
いま、CMでもZEH ゼロエネルギーハウス(ゼッチ)という
言葉がなんか独り歩きしていますが、確かにゼロエネルギーは
素晴らしいのですが、上記のような設計手法を用いず、断熱を
厚くして、サッシの性能を上げて、設備を高性能なものして
+太陽光発電でゼロにするという
メーカーが喜ぶような仕様になっている家の事なんですが
今の政治とおんなじで、無駄な部分を知恵を絞って削減しないで
そこには意識せず、かかるお金だけとりあえず予算を組んで
お札を刷って日本の借金を増やすという仕組みに似ている。
周辺環境は一つ一つちがうし、そもそも人の手が作るのに
その設計段階でもっと無駄なものが削減できるはずなのに
しない。意識しない。フォーマット化すれば楽だしね。
なんか違う気がする。
さて、いま絶賛施工中の現場。
なぜか平屋物件が古今のトレンドなのか2件
動いています。
平屋物件。
庇が深く、初見の際、本当にとんでもないポテンシャルを
秘めた物件だと直感的に感じました。
ここも、築年数と構造、現状を見つめた結果
しっかりと行政の補助金も利用しながら耐震改修
と断熱改修にお金を回し、新築同等性能と住まい手の
今後の暮らしを想像し、作り込んでいきます。
もう一件の平屋。
ここも補助金を利用し、耐震と断熱改修を施し
新旧の素材を織り交ぜながら、造作感たっぷりに
仕上げていきます。
海に近い平屋も同じですが、ここでは
断熱とともに気流も意識しています。
上記の自立循環の時間でも、講師の方が
断熱と気流をコントロールすることは
お寿司に例えると、寿司とガリの関係ではなく
シャリとネタの関係だと言っていました。
僕ら設計に携わる人間に、
建物の表面温度をしっかり設計してください
とおっしゃっていました。
要はワンセットで一つということ。
確かに以前は断熱と気流止めという言い方をしていましたが
今は断熱・漏気改修というセット文言になっていました。
これも世間では断熱断熱と言われていて、とりあえず
断熱材だけ厚いモノを入れておけばという
考え方ではだめだという事実は、真面目に家を造ろうと
する建築技術者や大工さんには一般常識ですが
一般の方には今一ピンとこないと思います。
私も事実、これらを意識せざるを経ない事がありました。
10年前に間取りの大きく変更したリフォーム
案件で、元々キッチンだった部分にお風呂を
配置し、間取りも仕上がりも含めて
喜んでいただいた物件の担当をさせて頂いた際
数年後のメンテの時に、新設の浴室(ユニットバス)が異常に
寒いと言われ、しっかり断熱をしたのになぜだと
思って、原因を床下に潜って確かめた事があり
その時に気付きました。
ユニットバスの裏と下に、元々の床下換気口と
キャップはしてあるのですが、スリーブ管があり
真冬に床下のスキマを通って壁の中や裏側に冷気が
廻っていることがわかりました。
確かにユニットバスの床と壁が本当に冷たい。
今のユニットバスは断熱がある程度施されて
いるにも関わらずです。
住んでからわかることの恐ろしさと自分の知識不足に
相当ショックを受けました。幸い、床下が広く
補完的な処理で少しは解決できましたが、完璧とは
言えない処理しかできず、今でもお付き合いがあるので
経過観察を続けています。
今の現場では床下はこのようなシートを先貼りします。
床の下地材のスキマを塞ぎ、冷気が上がらないように
する目的。
これを知っていれば私の失敗はなかったはずです。
間仕切り壁になる部分では、漏気が起こりやすい。
漏気止めをしているだけでは、今は夏場なので
床下が涼しいのでこういう色合い。
冬になるとこれが逆転して、冷気が壁の中に上がってくる。
そうすると断熱材の効果が薄くなるということ。
サーモグラフィーで見るとわかりやすい。
なので、シートでカバーし、電気配線が通る部分は
発泡ウレタンでスキマを埋めて
丸くして空気を抜いたグラスウールも用いて、対策します。
屋根や壁でもサーモグラフィーを用いて見ると
まずは壁。
換気扇のスリーブや今後窓が付く部分が暑い。
水筒はやっぱり冷たい。
撮影した現場ではこの青色に救われました!
これだけでひんやりします。
でも上手く断熱出来ている様子。
屋根は
この物件では屋根面に高性能グラスウールを重ね葺きし、
熱反射と屋根面の暑い空気を流すためのシートも併用。
ここに断熱を入れていくと
構造と屋根下地と断熱材の間で熱が逃げています。
今までは人の目や大工さんの施工品質よってのみ
行われていた現場管理がこのようなものを使うと
より確かに品質を上げることができる。
こういう場所がいくつかあるとやっぱり室内の
温熱環境に影響が出てくると思う。
こういうのを思うとやっぱり家は人が作るもの。
どれだけ優秀な設備を用いても、人の手で
やれることの方がよっぽど多い。
こういう所の品質が担保出来て、優秀な設備を併用
できれば、もっといい家になると思うのです。
どんなに頑張っても完璧にはならないし
改装規模によってやれることも違うし
お金のかけられ方も違う。
でもその中で最適解はきっとあると思うし
その最適解を探せる基になる知識と経験があれば
より少しでも性能を向上させた改装ができるとも
思う。
最適解を見つける努力と
極力エネルギーを使わない努力(設計手法)
を担保に、これから出てくるであろう優秀な設備に
助けてもらおうと思って家作りを続けていきます
元井